■目次

1. ウイスキー製造の基本とは

  • ウイスキーの原料:麦芽、水、酵母の役割
  • ウイスキー製造に必要な工程とは?

2. ウイスキーの製造工程を詳しく解説

  • 糖化工程:麦芽を糖に変える魔法
  • 発酵工程:酵母が生み出す香りとアルコール
  • 蒸留工程:フレーバーを凝縮するプロセス
  • 熟成工程:樽の魔法がウイスキーを完成させる
  • ボトリング工程:ウイスキーを商品化する最後の一手

3. ウイスキー製造のポイントと工夫

  • 原料選びのこだわり
  • ウイスキー製造の設備
  • ウイスキーの香りと味わいを左右する要素

4. まとめ

【この記事を書いた人】

アウグスビール株式会社
取締役COO 村井 庸介

1985年生まれ。慶應義塾大学を卒業して野村総合研究所に入社。
独立後、老舗クラフトビールのアウグスビールの坂本社長と出会い、クラフトビール造りにほれ込み株主となる。
店舗併設型クラフトビール工場やウイスキー蒸留所の立ち上げ支援を行う。



1. ウイスキー製造の基本とは?

ウイスキーの原料:麦芽、水、酵母の役割

ウイスキーの製造は、シンプルな3つの原料から始まります。それぞれの役割を理解することで、ウイスキーの多様な味わいがどのように生まれるかがわかります。

  • 麦芽(モルト)
    麦芽は主に二条大麦から作られます。発芽させた大麦を乾燥させることで糖化に必要な酵素を活性化。これにより、澄んだ甘みと独自の風味を持つ麦汁(ワート)が生まれます。ピーテッド麦芽を使用することでスモーキーな香りを加えることもできます。

  • 水はウイスキー製造の生命線といえます。糖化、発酵、蒸留、さらには熟成中に使用される水の質は、最終的なウイスキーの味わいに大きな影響を与えます。スコットランドの軟水や日本の山岳地帯の清水が典型例です。
  • 酵母
    発酵過程で重要な役割を果たす酵母は、麦汁内の糖分をアルコールと香り成分へ変換します。酵母の種類や発酵条件によってウイスキーの香りや風味が決定づけられるため、蒸留所ごとに独自の選択が行われます。

ウイスキー製造に必要な工程とは?

ウイスキーが完成するまでには、以下の5つの主要な工程を経ます。

  1. 糖化
    麦芽を粉砕し、温水と混ぜることで糖化酵素がでんぷんを糖分に変換します。この過程で得られる液体「麦汁(ワート)」が、ウイスキー製造の基礎となります。
  2. 発酵
    麦汁に酵母を加えることで発酵が始まります。糖分がアルコールと香り成分に変わり、アルコール度数5~10%の発酵液(ウォッシュ)が生成されます。
  3. 蒸留
    発酵液を蒸留器で加熱し、アルコールと香気成分を凝縮します。モルトウイスキーでは一般的に2回の蒸留が行われ、純度の高いスピリッツを得ます。
  4. 熟成
    蒸留したスピリッツを木樽に入れ、数年から数十年熟成させます。この間にスピリッツは樽材成分を吸収し、色や風味が豊かになります。
  5. ボトリング
    熟成を経たウイスキーを濾過し、アルコール度数を調整して瓶詰め。これで商品として完成です。



2. ウイスキーの製造工程を詳しく解説

糖化工程:麦芽を糖に変える魔法

ウイスキー製造の第一歩は「糖化」です。この工程では、粉砕された麦芽(モルト)を温水と混ぜ、でんぷんを糖に変換します。麦芽に含まれる糖化酵素が温水によって活性化し、甘みのある麦汁(ワート)を生成します。この甘みは後の発酵工程で酵母がアルコールを生み出すためのエネルギー源となります。糖化の温度管理は極めて重要で、適切な温度(約60〜70℃)を維持することで、効率よく糖分を引き出せます。

発酵工程:酵母が生み出す香りとアルコール

糖化によって得られた麦汁に酵母を加えると、発酵が始まります。酵母は麦汁中の糖分を分解し、アルコールと二酸化炭素を生成するだけでなく、ウイスキーの個性を左右するエステルやアルデヒドといった香り成分も生み出します。この発酵工程は約2〜3日間行われ、アルコール度数5〜10%の発酵液(ウォッシュ)が得られます。発酵槽の材質や温度管理が、最終的な風味に影響を与えるため、多くの蒸留所がこだわりを持ってこの工程を管理しています。

蒸留工程:フレーバーを凝縮するプロセス

発酵が終わったウォッシュは、蒸留器に移されて蒸留が行われます。蒸留では、アルコールと香り成分を分離・凝縮する作業が行われます。モルトウイスキーの場合、一般的に2回蒸留されます。初回の蒸留で得られる低濃度アルコール液(ローワイン)をさらに再蒸留することで、ニューメイクスピリッツ(アルコール度数約70%)が完成します。この工程では、蒸留器の形状や素材、ラインアームの角度などが風味に影響を与えます。

熟成工程:樽の魔法がウイスキーを完成させる

蒸留によって得られたニューメイクスピリッツは、木樽に詰められ、熟成が始まります。熟成期間中に樽材から溶け出す成分がスピリッツに加わり、香りや風味、色合いを豊かにします。一般的な熟成期間は3年以上で、樽の種類やサイズ、熟成環境(湿度、温度)がウイスキーの個性を決定します。例えば、バーボン樽はバニラの香りを、シェリー樽はドライフルーツのような甘い香りを与えます。

ボトリング工程:ウイスキーを商品化する最後の一手

熟成を終えたウイスキーは、濾過やアルコール度数の調整を経て瓶詰めされます。この過程では、冷却濾過(チルフィルタリング)を行うことで不純物を取り除く場合と、自然な風味を保つために非冷却濾過を選ぶ場合があります。ボトリングでは、ラベルデザインやパッケージングも重要なポイントです。これらは、商品としての魅力を高める要素となります。


3. ウイスキー製造のポイントと工夫

原料選びのこだわり

ウイスキーの原料は、麦芽、水、酵母の3つが基本ですが、原料の質がウイスキーの個性を決定します。特に麦芽には、ノンピート麦芽とピート麦芽の選択肢があり、ピート麦芽はスモーキーな香りを加えます。麦芽の種類や産地の選定は、ウイスキーの味わいや香りに大きな影響を与えるため、蒸留所ごとに独自のこだわりが見られます。

また、水の質も重要です。日本では、硬度が低く不純物が少ない軟水が多くの蒸留所で使用されています。さらに、酵母の種類によって生成されるエステルや香り成分が異なるため、独自の酵母を培養して使う蒸留所も増えています。

ウイスキー製造の設備

製造設備はウイスキーの品質に直結する重要な要素です。蒸留に使用するポットスチル(単式蒸留器)の形状や材質は、特に風味に影響を与えます。例えば、首が長いポットスチルは軽やかなフレーバーを生み出し、短くて太い形状は重厚な味わいを作り出します。

また、発酵槽には木製とステンレス製の選択肢があります。木製は伝統的な香りを生み出しやすく、ステンレス製は温度管理が容易で清掃性に優れています。どちらを選ぶかは、蒸留所の製造スタイルや目指す風味によって異なります。

熟成に使用する樽についても重要な設備の一部です。バーボン樽やシェリー樽、ミズナラ樽などの選択肢があり、これらの樽はウイスキーに独自の風味や色合いを与えます。

ウイスキーの香りと味わいを左右する要素

ウイスキーの香りや味わいは、多くの要因が複雑に絡み合って形成されます。特に以下のポイントが大きな役割を果たします:

  1. 熟成環境
    樽内でのウイスキーの熟成は、気候や湿度、温度によって影響を受けます。日本の湿潤な環境は熟成を早める一方で、エンジェルズシェア(蒸発による減少)も増えるため、適切な管理が求められます。
  2. 樽の履歴と種類
    新樽を使用するか、再利用した樽を使うかによって風味が変わります。再利用樽(ファーストフィルやセカンドフィル)は、ウイスキーに穏やかな風味を加えることができます。
  3. 蒸留回数と温度管理
    通常、モルトウイスキーは2回蒸留されますが、これにより雑味が除去され、アルコール濃度が高まります。また、蒸留の温度や速度を調整することで、特定の香り成分を引き出すことが可能です。
  4. 地域性
    スコットランド、アイルランド、日本など、それぞれの地域で使用する原料や技術、熟成環境が異なるため、ウイスキーのスタイルにも明確な違いが生まれます。


4. まとめ

ウイスキーは、麦芽、水、酵母というシンプルな原料を、長い工程を経て完成させる奥深い飲み物です。その製造プロセスには、糖化、発酵、蒸留、熟成、ボトリングという5つの主要なステップがあり、それぞれの工程が独自の味わいと香りを生み出す鍵を握っています。また、原料選びや設備、環境といった細部へのこだわりが、ウイスキーの個性を決定づけます。

クラフトウイスキー蒸留所が増える中で、原料や設備の選択に加え、地域特有の気候や文化を活かす工夫も注目されています。例えば、熟成に使用する樽の選び方や、水源の確保、独自の酵母の培養など、あらゆる要素がウイスキーの完成度に影響を与えます。

ウイスキー製造の魅力は、その複雑さと職人技の結晶にあります。本記事では、製造の基本から工程、工夫のポイントまで幅広く解説しましたが、ウイスキー製造に挑戦する際には、自分自身のこだわりやアイデアを活かすことが重要です。ウイスキー製造を通じて、自分だけの特別な味わいを生み出す喜びを味わってください。





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