■目次

  1. クラフトウイスキー起業の魅力と市場
  • 世界的なクラフトウイスキーブームの背景
  • ジャパニーズウイスキーが注目される理由
  1. ウイスキー蒸留所設立の基礎知識
  • 法規制とライセンス
  • ウイスキー蒸留所設立の予算
  1. クラフトウイスキー起業の流れ
  • 資金調達と計画
  • ライセンスの取得
  • 設備導入と蒸留器の選定
  • 原材料の選定
  1. まとめ



【この記事を書いた人】

アウグスビール株式会社
取締役COO 村井 庸介

1985年生まれ。慶應義塾大学を卒業して野村総合研究所に入社。
独立後、老舗クラフトビールのアウグスビールの坂本社長と出会い、クラフトビール造りにほれ込み株主となる。
店舗併設型クラフトビール工場やウイスキー蒸留所の立ち上げ支援を行う。

1.クラフトウイスキー起業の魅力と市場

世界的なクラフトウイスキーブームの背景

世界的なクラフトウイスキーブームには、消費者が大量生産品から個性重視の嗜好へと移行しているという背景があります。

欧米では小規模蒸留所が10年間で倍増し、特に地域独自の風土を反映した「テロワール・ウイスキー」が注目を集めており、例えば、スコットランドのある新興蒸留所は、自国産オーツ麦と希少な樽材を用い、年間生産量を絞り込むことで、1本あたりの市場価格を大手の数倍にまで高騰させることに成功しています。
こうした多様性は消費者にとって常に新たな発見を生み、クラフトウイスキーの価値となっているようです。

ジャパニーズウイスキーが注目される理由

ジャパニーズウイスキーの国際的評価は、2010年代以降の受賞ラッシュが端緒となり、そこから加速しました。

山崎や白州が世界最高峰のウイスキーとして評価された後、秩父、嘉之助、厚岸といった新進蒸留所が続々と国際的コンクールで輝きを放ち、そのたびに「次はどんな新顔が出てくるのか」という期待感がある状態です。

日本産のミズナラ樽による熟成は、微妙な香気成分が生み出す繊細な風味で世界を驚かせるなど、日本独自の優位性を発揮しています。

起業家目線では、ジャパニーズウイスキーへの注目はチャンスの宝庫と言えます。
ブランドづくりにあたり、歴史や風土、職人のこだわりなど独特のストーリーを世界に発信でき、需要の増大に伴って価格設定や販路選択の自由度も広がります。その結果、国内のみならず国際市場にも打って出ることで、事業拡大や収益性向上が期待できるでしょう。

2.ウイスキー蒸留所設立の基礎知識

法規制とライセンス

日本でウイスキー製造免許を取得するには、申請が必須で、審査は半年~1年程度かかることもあります。
免許取得には最低生産量や設備基準、原材料の品質管理計画が求められ、これらを満たさなければ免許交付はされません。また、海外輸出を念頭に置く場合は、進出先国の表示基準や関税制度への対応も必要です。
新興蒸留所が欧州や北米へ進出する際、税関でのラベル審査や原産地証明取得に手間取る事例もあります。
制度に対して細かく下調べしておくことが重要となります。

ウイスキー蒸留所設立の予算

初期投資額は蒸留所規模や目指す品質水準で大きく変動します。
小規模であれば最低数千万円からスタート可能な場合もありますが、基本的には1億円以上の初期投資が必要です。

ポットスチルは1基500万~1,000万円程度、オーク樽1本あたり数万円~十数万円、熟成倉庫建設や温湿度管理システム導入、研究開発用のミニラボ整備などを合算すると、あっという間に予算が膨らみます。
クラウドファンディングや補助金を活用するなどして資金調達をするのも手です。

経営初期は製品販売まで数年かかるため、ウイスキー以外の蒸留酒(ジンやウォッカ)を並行生産し早期収入源とする戦略も有効です。こうした工夫を積み重ねることで、長期的な投資回収を見据えた安定経営が実現できます。

3.クラフトウイスキー起業の流れ

資金調達と計画

初期投資は数億から数十億円規模に及ぶこともあり、クラウドファンディングでの1,000万円超の調達や、欧州投資家から数千万円規模の出資獲得など、ユニークな資金確保手段が増えています。

また、蒸留所見学ツアーといった地域密着イベントでコミュニティを盛り上げ、ファンが自ら支援者になってくれる状況を作り出すのも良いでしょう。
計画策定時には、熟成期間を考慮したキャッシュフロー予測や、限定ボトルの高価格販売で収益性を確保する戦略を組み込み、投資家・融資元に「この事業は長期的な価値を生む」と納得させることが重要です。

ライセンスの取得

酒税法に基づく製造免許申請には、生産計画、品質管理、財務状況など多角的な審査を突破する必要があります。
通常半年~1年程度かかると言われる免許取得期間を短縮するためには、早期から専門家に監修してもらうのも良い方法でしょう。
ライセンスの取得を迅速に行い、ブランド構築やマーケティング活動に迅速に移行できるようにしましょう。

設備導入と蒸留器の選定

銅製ポットスチル1基で500万~1,000万円、オーク樽1本で数万~十数万円、さらには発酵槽や粉砕機、熟成倉庫などを加算すれば、総額はあっという間に数千万円単位になります。
小ロット生産でテストバッチを繰り返し、徐々に設備を増強する戦略も有効です。

最初は小規模設備でスタートし、国際コンクール受賞後に追加設備への投資を行い、スケールアップとブランド強化を同時に進めた例もあります。

原材料の選定

大麦・ライ麦・コーンなどの穀物はもちろん、水質や酵母、樽材まで、素材選びは奥深いテーマです。

輸入樽と国産原料をミックスすることで、独自のフレーバープロファイルを生み出すなど、あらゆる可能性があります。
原材料選定は味わいだけでなく、ストーリーづくりにも直結します。地域資源を活かしながら、国際的な風味トレンドや消費者嗜好の変化に対応することで、オンリーワンのブランドアイデンティティを確立するのが大切です。

5.まとめ

世界的なクラフトウイスキーブーム、ジャパニーズウイスキーの成功要因、法規制・資金計画・設備選定・原材料確保といった実務的なポイントを総合的にお伝えしました。

クラフトウイスキーの起業は、初期投資が大きく、免許取得や品質管理にはハードルが存在しますが、計画的な資金繰り、投資回収を見据えた熟成戦略、輸出先国の法規制対応、限定リリースや観光誘致による付加価値創造など、多面的なアプローチにより、今後の大きな成長が期待できる分野です。

日本のクラフトウイスキーは世界的にも非常に注目されており、参入障壁が高い分、軌道に乗ってしまえば期待以上の成果が出ることもあるでしょう。

自分だけの味わい、物語、ブランドを育み、世界へ送り出すことは、単なるビジネスを超えた社会的・文化的意義を持つ挑戦となります。是非、ウイスキー起業という壮大なステージで、あなたの一歩を踏み出してみてください。




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